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相続発生後の節税対策!これだけは押さえておきたい4つのポイント

相続税は、生前の準備次第で大幅に節税できる可能性があります。しかし、多くの方が「自分はお金持ちではないので相続税の心配はないだろう」と思われており、特に対策を行っていないケースも珍しくありません。

実際に相続が発生してから相続税の申告が必要であることが判明したり、高額な相続税に驚かれたりする遺族の方も多いのです。

今回は、お亡くなりになった後でも間に合う相続税の節税対策について、重要な4点を解説します。

対策1:配偶者控除で節税する

1-1.配偶者控除とは

まず、相続税の「基礎控除額」について解説します。

基礎控除とは、「相続財産のうち、税金がかからない金額の範囲」です。

基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。

 

3,000万円+600万円×相続人の数

 

相続人が配偶者と子2人の場合、3,000万円+600万円×2=4,200万円が基礎控除額です。

つまり、このケースですと、相続財産が4,200万円以下であれば相続税を払う必要はありません。

4,200万円を超えた場合は、超過した金額に税金(相続税)が課されます。

 

一方、「配偶者控除」は、その名の通り配偶者のみに適用される控除です。

相続財産の金額が基礎控除額を超えたとしても、配偶者の受け取った財産の額が「相続財産の1/2(配偶者の法定相続分)」または「1億6,000万円まで」は相続税がかからないようになっています。

そのため、相続人の中に配偶者がいるのであれば、配偶者ができるだけ多く遺産を受け取るほうが節税になると言えます。

 

配偶者控除がある理由は、以下のとおりです。

・配偶者の今後の生活を保障するため

・被相続人の財産の形成には、配偶者の貢献があったと考えられるため

・短期間のうちに2度相続税が発生することを避けるため

最後の1点が分かりにくいですが、配偶者への財産移転は「同一世代間の財産移転」のため、次の相続(多くは配偶者から子)までの期間が短いと考えられるからです。

 

■配偶者控除適用の条件
・戸籍上の配偶者であること(内縁関係は適用不可)
・相続税の申告期限までに遺産分割を終えていること
・相続税の申告書を税務署に提出すること

 

1-2. 次の相続で、相続税が高くなる?

ただし、配偶者控除の活用では注意すべき点があります。それは「相続人である配偶者が亡くなった場合」のことです。

被相続人(亡くなられた方)から配偶者が受け取ったすべての財産は、再び「相続財産」として次の相続税の対象となります。

最初の相続を「一次相続」というのに対し、次の相続を「二次相続」といいますが、二次相続では次の理由により相続税が高くなります。

 

・配偶者は亡くなっているため「配偶者控除」が使えない

・法定相続人が1人減るため、基礎控除額が下がる

 

一次相続の相続人として配偶者と子供がいた場合、一次相続では配偶者が多く財産を受け取るようにして節税したつもりが、二次相続(配偶者から子供への相続)も含めると、相続税の総額が高くなってしまう、というケースが起こり得るのです。

この対策を行うのが、次で詳しく解説する「二次相続対策」です。

 

対策2:二次相続対策をして節税する

相続は一度で終わるとは限りません。

しかし、一次相続の際に二次相続まで考えて遺産分割を行う人は少ないものです。払わなくてもいい税金を払ってしまうことになる前に、一度税理士にご相談ください。

 

では、遺産分割の方法で、「一次相続と二次相続の合計相続税額」がどれくらい変わるのか、A~Dの4つの具体例で見ていきましょう。

 

例:夫(被相続人)の財産は2億円

   相続人は妻(配偶者)と子2人

 

A.法定相続割合で分割した場合

法定相続割合の場合、配偶者の法定相続分は遺産の1/2で、子供が複数人いる場合は残りの1/2を均等に分けます。

妻が1/2である1億円、子供2人が1/4である5,000万円ずつ相続

妻の遺産1億円を、子供2人が5,000万円ずつ相続

 

合計相続税額:2,120万円

 

B.配偶者控除を限度額まで利用して遺産分割した場合

次は、一次相続の際に妻が配偶者控除を最大限利用したパターンです。配偶者控除額は1億6,000万円まででしたね。

妻が1億6,000万円相続し、子供2人は2,000万円ずつ相続

妻の遺産1億6,000万円を、子供2人で8,000万円ずつ相続

 

合計相続税額:2,680万円

 

C.全員ほぼ均等に遺産分割する場合

妻が6,600万円、子供2人が6,700万円ずつ相続

妻の遺産6,600万円を、子供2人が3,300万円ずつ相続

 

合計相続税額:2,069万円

 

D.妻が基礎控除額のみを相続した場合

妻が二次相続の基礎控除額4,200万円を相続し、子供2人が7,900万円ずつ相続

妻の遺産4,200万円を、子供2人が2,100万円ずつ相続。二次相続においての相続税額は0に!

 

合計相続税額:2,133万円

 

まとめ

一次相続での遺産分割方法

一次相続と二次相続の合計相続税額

A.法定相続割合で分割

2,120万円

B.配偶者控除を限度額まで利用

2,680万円

C.全員ほぼ均等に遺産分割

2,069万円

D.妻が基礎控除額のみ相続

2,133万円

 

配偶者控除を最大限に使うと、一次相続の際の相続税は確かに安くなります。しかしこの例のように、二次相続の際に大きな相続税が発生する可能性があるのです。

 

このことから、遺産分割の際は「二次相続まで考慮すること」が望ましいと言えます。

 

なお、相続税の額は「財産の額」と「法定相続人の人数」によって変わります。そのため、どんな場合でもこのADのパターンと同じ結果になるわけではありません。

 

遺産分割方法以外の、二次相続の節税対策には以下のようなものがあります。

 

・生前贈与をする

妻(配偶者)が子供に生前贈与をすることで、妻の死亡時に相続税の対象となる財産を減らします。

生前贈与では「贈与税」が課されますが、1人あたり年間110万円までであれば課税の対象外です。そのため、毎年少額ずつ贈与すれば、贈与税がかかりません。

ただし、贈与する年数と、1回あたりの金額を最初に決めてしまうと「連年贈与」となり、総額(年数×1回あたりの金額)に対し贈与税が課されてしまいます。

この対策としては、贈与のたびに新たに契約することです。

また、亡くなる三年以内に法定相続人に贈与した財産は、「相続財産」となることも覚えておきましょう。

・生命保険に加入する

妻(配偶者)が、自身を被保険者・子供を保険受取人にして生命保険に加入します。

妻が死亡した際、子供が受け取る死亡保険金は相続税の対象となりますが、死亡保険金には「非課税限度額」が適用されます。

非課税限度額は500万円×相続人の数なので、子供2人であれば1,000万円までが非課税となり、相続税を節税できます。

その他

・住宅購入資金として子供に財産を移す(住宅取得資金の贈与の特例)
・結婚・子育て資金として子供に財産を移す(結婚・子育て資金の一括贈与の特例)
・教育資金として子供に財産を移す(教育資金の一括贈与の特例)

など

 

このように、相続税の節税は多方面から検討することができます。

当事務所では、これらの要因をすべて検討したうえで、今回の相続(一次相続)で配偶者がいくら相続すべきかをご提案します。

対策3:小規模宅地等の特例を使って節税する

小規模宅地等の特例とは

被相続人が住んでいた土地や、被相続人が事業を営んでいた土地を相続した際に、その土地の評価額を大幅に引き下げる制度です。

評価額が下がることで、課される相続税も下がり、相続人への負担を大幅に減らすことができます。

 

具体的には、

・居住用の土地や事業用の土地であれば、評価額80%減
・駐車場などの貸付事業用であれば、評価額50%減

となります。

上限の面積も決まっており、居住用は330㎡まで、事業用は400㎡まで、貸付事業用は200㎡までです。

 

被相続人の土地は、相続人の今後の生活において必要な財産になります。このような財産に多額の相続税をかけてしまうと、相続人が自宅や事業所を手放さなければならない可能性が出てきてしまいます。

そうならないために作られた制度が「小規模宅地等の特例」なのです。

土地を相続されるのであれば、節税のために、この制度が適用できるかを検討しましょう。

小規模宅地等の特例が適用される条件

小規模宅地等の特例が使える土地は、主に以下の3パターンです。

・居住用:被相続人が住宅として使っていた宅地
・事業用:被相続人が事業に使っていた宅地
・貸付用:被相続人が所有するアパート、駐車場などの宅地

それぞれの適用条件を見ていきましょう。

 

【居住用】

小規模宅地等の特例における減額割合:80%

面積:330㎡まで(約100坪)

適用条件

配偶者

条件なし

同居していた親族

相続開始から相続税申告期限まで、引き続きその家屋に住み、かつその宅地等を所有していること

同居していなかった親族

以下のすべてを満たしていること

●被相続人に配偶者がいないこと

●被相続人と同居していた相続人がいないこと

●相続開始前3年間に、自己・自己の配偶者・自己の3親等内親族・自己と特別に関係のある法人が所有している家屋に住んでいないこと

●相続開始時、自己が居住している家屋を過去に所有していないこと

●相続開始から相続税申告期限まで、引き続きその宅地等を所有していること

 

【事業用】

小規模宅地等の特例における減額割合:80%

面積:400㎡まで(約120坪)

適用条件

・事業を受け継ぐ親族が取得すること

・相続税の申告期限までに事業を引き継ぎ、かつ、その事業を営んでいること

・相続税の申告期限までその宅地等を所有していること

 

【貸付用】

小規模宅地等の特例における減額割合:50%

面積:200㎡まで(約60坪)

適用条件

・相続する親族が取得すること

・相続税の申告期限までに貸付事業を引き継ぎ、かつ、その貸付事業を営んでいること

・相続税の申告期限までその宅地等を所有していること

 

二次相続も考えた、小規模宅地等の特例活用
一次相続で、同居の子供が相続する

一般的に、配偶者は被相続人と同居していることが多く、特に居住用宅地については配偶者が相続することが多いものです。しかし、配偶者は相続税の軽減が適用できるため、相続税がかからないこともよくあります。

つまり、もともと相続税がかからない配偶者に小規模宅地等の特例を活用しても意味がないといえます。

同居していた子が相続すれば、小規模宅地等の特例によって子にかかる相続税が軽減されます。さらに、配偶者が亡くなった際には二次相続が起こりますが、このときの遺産を少なくできるため、二次相続の節税対策となるのです。

子が小規模宅地等の特例を使用するためには条件がありますので、税理士にご相談ください。

 

小規模宅地等の特例の注意点

小規模宅地等の特例の要件は、非常に複雑です。ここではよくあるパターンについて解説します。

被相続人が老人ホームに住んでいた場合

居住用宅地に小規模宅地等の特例を使うためには、被相続人や同居親族がその宅地を「生活の拠点」としていたことが条件となっています。

そのため、被相続人が老人ホームなどを長年利用しており宅地に居住していなかった場合は適用外となるのでしょうか。

結論から言いますと、以下の要件をクリアしていれば基本的に適用することができます。

・「要介護認定」「要支援認定」を受けていること

相続の開始、つまり被相続人が亡くなった時点で、要介護認定または要支援認定を受けている必要があります。これらの認定の申請中に亡くなってしまっても、相続発生後に市区町村から要介護・要支援の認定がされた場合は、遡って適用可能となります。

健康な状態で老人ホームへ入居していた場合は、小規模宅地等の特例が受けられません。

・自宅を他の用途に使用していないこと

被相続人が老人ホームへ入居したあと、例えば第三者に賃貸するなど「他の用途」に使用していた場合は、小規模宅地等の特例を受けることができません。

ただし、生計を同一とする親族が老人ホームの入居後に引っ越してきて、かつ家賃の授受を行っていない場合には適用となります。

 

以下のようなパターンは小規模宅地等の特例の適用外です。

・二世帯住宅で親子が区分登記をしている場合の、子の居住部分

・二世帯住宅に住んでいた子世帯が、転勤などを理由に転居していた

・遺産分割が相続税申告期限内に終わっていない

(「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を出すことで後日還付を受けることが可能)

適用が受けられるか否かについての詳細は税理士にご相談ください。

 

対策4:土地の評価額を下げる特例を使って節税する

 

土地の評価とは、相続税を計算するうえで「土地をいくらの金額にするか」ということです。

当然ですが、土地の評価が高ければ税金も高くなり、土地の評価が低ければ税金も安くなります。相続財産となる土地の評価をできるだけ下げることが節税になるというわけです。

 

土地の評価を下げるというと、土地の価値が低くなるようで不安に思われるかもしれませんが、あくまで「税金の算出にかかわる評価額」が低くなるだけですのでご安心ください。

 

まずは、基本の土地の評価方法から見ていきましょう。

 

土地の評価方法

路線価方式

都市部や住宅地のほとんどは、この路線価方式で評価します。道路ごとに「路線価」と呼ばれる金額がつけられており、その道路に接している土地の1㎡あたりの金額が評価額となります。相続税路線価は、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」にて公開されています。

この方式では、以下のように評価します。

評価額=路線価×土地の面積(㎡)

 

倍率方式

郊外になると、相続税路線価が定められていない土地があります。このような場合、以下のように評価額を求めます

評価額=固定資産税評価額×倍率

 

固定資産税評価額は、毎年市区町村より送られる「固定資産税納税通知書(課税明細書)」に記載されています。倍率は、路線価と同様に国税庁のホームページで調べることができます。

 

正方形の土地などであれば、上記の方法で評価しますが、現実には土地の形が複雑であったりします。

そのような場合、正方形の土地と比較すると利用しづらいので、土地の評価額を低くしておかないと税制上不公平になります。

そこで「評価額を下げる特例」があります。

 

小規模宅地等の特例を使う

上記の方法で求められる土地の評価額は、建物が建っていない「更地」の相続税評価額です。

この土地に、被相続人の自宅が建っているのであれば、まずは「小規模宅地等の特例」を検討します。

詳しくは「小規模宅地等の特例を使って節税する」で解説していますが、一定の要件を満たしてこの特例が適用されれば、自宅の敷地の相続税評価額は80%減額されることになります。(330㎡まで)

その土地に、アパートやマンションなど賃貸住宅が建っている場合にも、「賃家建付地」として約20%の減額が望めます。また、事業用の土地として「小規模宅地等の特例」の要件が満たされれば、50%減額となります。(200㎡まで)

 

土地の相続税評価額が下がる例

続いては、「小規模宅地等の特例」以外で土地の評価額が下がるケースをご紹介します。

先ほど挙げた基本の土地の評価方法は、正方形や正方形に近い形の土地を想定しています。ですが、実際には土地の形は様々です。また、周辺の環境によって価値が下がる土地もあります。

 

・不整形な土地

正方形や長方形外の土地は「不整形地」と呼ばれ、評価額が下がる可能性があります。路線価格は道路に付いた価格なので、同じ道路に接している正方形の土地も、いびつな形の土地も評価が同じとなってしまいます。それでは不公平なので、形の悪い土地は評価を下げられることになっています。

 

・傾斜のある土地

傾斜のある土地は、平坦な土地と比較して価値が下がります。相続税の計算においては、傾斜の角度によって控除額が定められています。

 

・間口の狭い土地

その土地が「道路に面している長さ」を「間口」といいます。間口が狭い土地は、例えば車が入りづらかったり、建物を建てづらかったりと使い勝手が悪いため、著しく評価が下がることがあります。

 

・私道のある土地

自分の土地であっても、不特定多数の人が使う道路は評価額を下げることができます。

 

・面している道路の幅が4m以下の土地

道路の幅が4m以下の場合は、将来道路が拡張される可能性があります。そのため、新しく建物を建てる場合にも、道路になる可能性のある部分には建てられません。

土地全体のうち、道路になる部分の土地の評価額を7割減額することができます。

 

・路線価が設定されていない道路に面した土地

住民用の行き止まりの道には、路線価が付いていないことがあります。そのような道に接した土地の評価をするために、納税者が路線価を決めて申し出て、路線価を設定することができます。(特定路線価)

 

・賃貸物件を経営している土地

「小規模宅地等の特例を使う」でも触れましたが、土地の上にアパートや賃貸マンションを建て、人に貸している場合は「賃家建付地」となり評価額が下がります。

稼働率や、国の定めた借地権割合、借家権割合などによって減額割合は変化します。

 

・宅地化するために費用がかかる土地

例えば田んぼを宅地化するためには、埋め立てなどの造成費がかかります。同じ道路に接していても、現在家が建っている土地と、田んぼの土地を同じ評価額としては不公平です。そのため、宅地化するために費用がかかる土地は造成費を控除することができます。

 

・騒音や振動がある土地

鉄道などが通っており、騒音や振動がある土地は評価額が下がります。騒音であれば「○デシベル以上」など上限が決まっています。

 

その他

・日が当たらない土地
・高圧線が上を走っている土地
・トンネルの上にある土地
・隣に墓地や斎場がある土地

など

 

土地の評価は税理士の腕の見せ所

預金など金額がはっきりしている相続財産を少なく評価することはできませんが、土地は評価方法次第で大きく相続税額を下げられる可能性があります。

「小規模宅地等の特例」を最大限に活かすためにはどのように遺産分割すべきか、また土地の評価を下げるためにどのような方法がとれるかは、専門家である税理士にお任せいただければと思います。

当事務所では、専門知識と豊富な事例をもとに、お客様にとってベストな相続をご提案いたします。

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